街の近くにペンギン、アザラシ、アホウドリ ニュージーランド・ダニーデン《公式》

大塚和成です!!


11/29(木) 11:22配信 朝日新聞デジタル&[アンド]

街の近くにペンギン、アザラシ、アホウドリ ニュージーランド・ダニーデン

親ペンギンのマネをして毛づくろいをする赤ちゃんペンギン

【連載】楽園ビーチ探訪

ニュージーランド南島のダニーデンは、火山活動により渓谷に海が割り込んで生まれたオタゴ半島と、湾の奥まった部分の市街地からなります。1848年にスコットランドからの入植により築かれた歴史ある町のひとつです。入植者がやってきてから170年。この街は自然と折り合いを上手につけながら、共存してきたのでしょう。街から車で1時間足らずで、野生動物たちがのびのびと暮らす海が広がっています。


中心地から車で約45分のオタゴ半島のウェラーズロックの波止場から、クルーズ船のM. V. モナーク号に乗船。レンタルした防水加工の防寒具に身を固め、向かったのは半島突端のタイアロア・ヘッド。出港して間もなく、荒々しい岩肌に無数の黒い点がうごめいているのが見えてきます。海鳥のコロニーです。岩場の影にはのんびりと昼寝をしているニュージーランドオットセイや体長40センチほどのコガタペンギンの姿もあります。

ふと頭上を見上げると、グライダーのように旋回する翼幅3メートルの海鳥のノーザン・ロイヤル・アルバトロス(キタシロアホウドリ)が。この巨大な海鳥が人々の暮らす市街地の近くに営巣するのは、世界でもここだけだそう。この日は、海況がやや荒く、海風も冷たく、かなり厳しいコンディションでしたが、頭上近くを飛行するアルバトロスの迫力に、そんなつらさも吹っ飛びました。

陸に戻り、次の野生動物との邂逅(かいこう)は、波止場から車で5分足らずのペンギンプレイスにて。ここは絶滅危惧種のイエロー・アイド・ペンギン(キガシラペンギン)を保護する民間施設です。頭に黄色のバンドを巻いたように見え、黄色い目をしたこのペンギンは、ニュージーランドをはじめ、亜南極地域に生息しています。2015ー16年の調査ではスチュワート島を含むニュージーランド本島で確認されたのは、わずか510羽。年々減少傾向にあるそうです。

90分間のウォッチングツアーでは、はじめに室内でペンギンたちの生態などのレクチャーを受けます。その後、アリの巣のようにめぐらされた通路内を移動し、ところどころののぞき穴から外の様子をうかがい、彼らの姿を探します。声を潜めながら、「あっちにいるかな?」「こっちは遠すぎるな」と。これが、冒険気分たっぷり。

のぞき穴は草むらに隠れ、ペンギンの側からはこちらがのぞいていることがわからないような仕掛けになっています。波打ち際で沖を見つめるペンギン、池の淵でボーッと立っているペンギン、草むらで親と遊んでいる赤ちゃんペンギン。彼らのリラックスした自然な姿を、間近で見ることができるのです。ふわふわの産毛が愛らしい赤ちゃんペンギンを見るなら、ヒナが誕生する11月から2月までを狙いましょう。ちなみに、ツアー料金の一部はペンギンの保護活動に使われています。野生動物の保護活動や環境保全プロジェクトに積極的に取り組むダニーデンは、“エコ・キャピタル”とも呼ばれています。

ダニーデンは文化的にも面白い街です。街を創生した移民たちはここに遠く離れた祖国スコットランドを再現しようと、ビクトリア朝やエドワード朝の建物を造り、食文化を持ち込みました。小説家マーク・トウェインがこの街を訪れた時、「ここの人々はスコットランド人だ。彼らは楽園を求めて故郷を後にし、目的地に到着したと信じて、この地に留まったのだ」と語ったと伝わります。今でもスコットランド的慣習は守られ、卒業シーズンにはアカデミックガウンの卒業生の傍らで誇らしげなキルト姿の父親を見かけることもあります。

様々な建築様式の建造物を見上げながら街を歩けば、あちこちのビルの壁面に描かれたモダンなストリートアートも目にします。歴史的なものと現代的なものが、街でみごとに共存しています。ちなみに、ダニーデンにはギネス記録認定の世界一の傾斜の坂道があり、一斉にチョコボールを転がすお祭り「キャドバリー・チョコレート・カーニバル」のジャッファレース(ジャッファとはニュージーランドの有名なチョコレートボール)も面白そうです。

取材協力/ニュージーランド政府観光局

https://www.newzealand.com/jp/

(文・写真 古関千恵子 / 朝日新聞デジタル「&TRAVEL」)

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