お酒で英会話が上達する!? サイエンスに裏打ちされた大人の外国語学習法《公式》


大塚和成です!!!

お酒で英会話が上達する!? サイエンスに裏打ちされた大人の外国語学習法

適度なアルコールで外国語の発音が格段に良くなる!?

英語(外国語)を学習中という人の中にもお酒好きは少なくないだろう。世界に冠たる日本酒のウンチクを英語で紹介できれば何かと観光客にも喜んでもらえそうだ。そして実際のところ、お酒で外国語の会話能力が向上するらしいという、お酒好きに嬉しい研究が報告されている。

■適度なアルコールで外国語の発音が格段に良くなる!?

 今日のグローバル経済の中では、英語をはじめとする外国語学習の必要に迫られているビジネスパーソンも多いと思うが、お酒好きには少し嬉しくなるかもしれないニュースが届いている。適度なアルコールが外国語の会話能力を向上させるというのだ。

 オランダとイギリスの合同研究チームが先ごろ「Journal of Psychopharmacology」で発表した研究では、最近になってオランダ語学習をはじめたドイツ人50人が参加した実験が報告されている。

 実験では直前にビール(アルコール度数5%、平均450ml)を飲んだ参加者と、ノンアルコール飲料を飲んだ参加者にそれぞれ現在学習中のオランダ語でスピーチをしてもらい、どのくらい流暢に話せたかを第三者のオランダ人が評価すると共に、話した本人にも自己採点してもらった。

 結果は歴然としていた。第三者はビールを飲んだ者のほうに大きな差つけて高く評価したのだ。特にオランダ語の発音がビールを飲んだ者のほうが格段に良いと評価していた。つまり適量のアルコールで外国語のスピーキング能力が向上したことになる。

 しかしながら不思議なことに、話している当人の自己評価はアルコールを飲む飲まないに関係がなかった。つまり上手くなった自覚がないということになる。

 アルコールで酔えば脳の機能が低下することは誰の目にも明らかであり、当人の論理的思考能力や外国語能力も下がると考えられるのだが、研究チームよれば無難な量のアルコールの摂取により、気が大きくなって自信が高まり、社会的な不安感が払拭されることにより、外国語を話すことに躊躇しなくなるからであると説明している。少し酔ったほうが口が滑らかになるという人も少なくないと思うが、それは外国語のスピーチにもあてはまることになる。

 しかしながらこの効果を発揮するのはあくまでも“適量”のアルコールであって、そのまま飲み続ければ脳機能も下がり続け外国語どころの話ではなくなることは言うまでもない。

 ともあれ外国人の友人知人と少しお酒を飲みつつ外国語で話をするのは、外国語学習という観点からもなかなか貴重な体験と言えるのかもしれない。いわゆる「英会話カフェ」なども夜はアルコールが飲めるところもあり、最近では店の中の会話を外国語にしている“語学バー”も存在する。外国語会話学習の一環としてこうした施設をうまく活用してみてもいいのかもしれない。

■サイエンスに裏打ちされた大人の外国語学習法7選

 日本語だけの環境に日々どっぷりと浸かった中での外国語学習はなかなか困難を伴うものであるのはご存知の通りだ。そこで最近の「Lifehack」の記事では、サイエンスに裏打ちされた効果的な外国語学習法を7つ解説している。

1. 学習初期は“音”にフォーカスする

 学習初期においては単語や文法よりも先に“音”から入るべきであるという。具体的には音声教材などで短文を繰り返し聞き、自分でなるべく正確に発話することだ。英語の“L”と“R”を聞き分けられない人が多いといわれる日本人には特に重要な事前学習であるという。

 外国語を学習する気持ちになれば、いきなり単語の暗記や文法の理解などを熱心にはじめてしまいがちになるが、焦らずにその前段階として短文のリスニングと暗唱を一定期間行い“下地”を作っておくことで後の学習がより効果的になるという。これは幼児が母国語を覚える過程をなぞる学習方法である。

2. 単語の暗記では“間隔反復”のテクニックを活用する

 単語の暗記では間隔反復(spaced repetition)のテクニックをうまく活用する。例えば単語集をポストイットなどでいくつかに分け、1日にその分量のみを順番に暗記していくのだ。翌日は前日の復習をせずに次の分量を暗記しどんどん先へ進んでいく。単語集の全体の分量にもよるが、どこかの時点で最初に戻ってみてもいいし、とりあえず最後まで終わらせてしまってもよい。そしてこれを何週も繰り返すのである。最初に戻ったときにかなりの部分を忘れてしまっていたとしてもショックを受けず、再び機械的に暗記していくことで時間的に効率よく一定量の単語が暗記できる。いわゆる“一夜漬け”は暗記の内容が短期記憶になり忘れるのも早いが、それに対してこの間隔反復は暗記した内容を長期記憶に変換する技術であると考えられている。

3. 痛みで暗記する

 これは手放しで勧められる暗記法ではないが、単語カードなどを暗記する際に自分の腕を指でつねって痛みを引き起こすことで記憶の保持率が高まるということだ。例えば30語の単語カードを最初は普通に暗記し、次に腕や腿などをつねりながら痛みと共に暗記し直す。そして次からは暗記できなかった単語のみを痛みと共に再び暗記していき、これをつねらなくてよくなるまで繰り返すのだ。しかし重症を負わないようにくれぐれも注意したい。

 つねられた時の痛みという身体的な脅威によって、自分が本来持っている能力を引き出すことがこの暗記法のサイエンス的な裏づけであるという。

4. 睡眠や仮眠を活用する

 睡眠は記憶の定着に重要な役割を担っている。したがって朝に学習するよりも、夜寝る前に学習したほうが記憶の定着には効果的だ。あるいは一定量の学習後に仮眠をとるのも記憶の定着に有利に働く。

5. 興味のあることを学ぶ

 1985年のアメリカの研究では、フランス語を履修している学生はフランス語のリーディングとライティングに優れている傾向があるが、その一方で語学ではない学科をフランス語で受けている学生はフランス語のリスニングが極めて優れていることが報告されている。つまり一般的な語学学習も必要ではあるが、その言語で何を学ぶのかその内容がとても重要であり、ひいては語学力をさらに引き上げることに通じるのだ。

 教材を用いた学習だけでなく、興味のある内容のコンテンツにその言語で触れる機会を増やしたいものだ。

6. すでに知っている物事に学習中の言語で触れる

 童話やアニメ映画など、母国語ですでに知っているコンテンツを学習中の言語で読んだり視聴したりすることできわめて効果的に言語に親しむことができる。

7. 学習のスピードを上げる

 成人になってからの語学学習の難しさは学習時間の捻出にもある。さまざまな“大人の事情”で学習時間が取れない日も出てくるだろう。そこで鍵を握るのは学習スピードだ。特に復習のスピードを可能な限りアップすることで、短時間で効果的な学習が可能になる。週末にまとめて長時間学習するよりも、短時間でいいので毎日学習したほうが良い結果に繋がるようだ。

■外国語をマスターすることで得られる5つの恵み

 外国語学習に取り組む人々にはそれぞれの動機と目的があると思うが、新たな言語を身につけることで意図せずとも何かとありがたい“副産物”がついてくるという。いずれもオマケと言っては失礼なほどの願ってもみない賜物だ。旅行情報サイト「Travel + Leisure」の記事が外国語をマスターすることで得られる5つの恩恵を解説している。

1. 注意力と精神的機敏さの向上

 たとえ短時間であっても日常的に語学学習をすることでメンタルの能力が向上することが各種の研究で指摘されている。2016年に英・エディンバラ大学の研究チームが発表した研究では1週間のゲール語の学習プログラムで年齢に関わりなく各種の精神的な機敏さ(mental alertness)が向上したことが確かめられている。

2. マルチタスクがより自然にできるようになる

 米・ペンシルベニア州立大学の2011年の研究では、バイリンガルはモノリンガルよりも物事を同時平行的に進める作業、いわゆるマルチタスクの能力が大幅に優れていることを報告している。

 バイリンガルの脳は、無関係な情報を素早く省き、本当に重要な物事を暴き出すことがより自然にできるということだ。この能力はバイリンガルは常に物事を2つの方向から見ていることに起因し、いわば日常的に“脳トレ”をしていることで、優先順位を素早く把握して評価することに自然に長けてくるという。

3. 意思決定がシンプルになる

 米・シカゴ大学の2012年の研究では、外国語を使って考えることで、より合理的で偏見の少ない意思決定が可能になることを指摘している。

 あるひとつの意思決定において人間はより多くの利益を得ようとするよりも、可能な限り損失を回避しようとする損失回避(loss aversion)の傾向があることが行動科学の知見から指摘されているが、外国語で考えることによってのこの損失回避性を抑制した判断ができるようになるという。これは外国語を使うことで、感情的な要素を排除し物事を客観的に見られるようになるからであるということだ。

4. 高齢期の認知機能の低下を抑えられる

 2011年のルクセンブルクの研究では、2ヵ国語以上を話せる人は高齢になってもアルツハイマーや認知症などのメンタルの問題のリスクが低くなることが報告されている。バイリンガル以上のスキルは認知機能の低下に抗する“盾”になっているということだ。この効果は使える言語が増えるほど増し、4ヵ国語以上ができる高齢者で最も認知機能低下がリスクは低くなるという。

5. 実際に脳が大きくなる

 2014年のカナダとイギリスの合同研究チームの報告では、外国語を習得した者の脳はそれ以前よりも脳の皮質が厚くなっていることを報告している。皮質の厚さは総じて知能に関係があるとされている。

 成人の外国語学習者にとって少し嬉しいのは、脳の皮質が厚くなるのは後天的に外国語を習得した者に見られ、生まれながらにバイリンガルに育った者には見られないという点だ。しかしながらいずれにしても、日常的に2つ以上の言語を使っている者は脳の灰白質(gray matter)の量が多くその結果、注意力、感情の抑制、短期記憶の能力が向上するという。

 成人になってからの外国語学習でも、単なるスキルという以上にさまざまなメリットがあることがわかっている。外国語学習は何歳からはじめても“脳に良い”ということで、むしろ中高年層にとっては運動と同じくらい重要なものかも知れない。

文/仲田しんじ

※記事中のデータ等は取材時のものです

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